DAITOTIME8,9月号(Vol.79):【野崎駅前歯科クリニック】歯科医良好!! #20 専門の話 後編

前回は歯の根の治療にたずさわる経緯を書きました。今回は補綴(ほてつ)の話です。
補綴というのはかぶせ物や入れ歯などの部門です。家庭の事情のため、北海道から大阪へ転出を余儀なくされた私ですが大阪は完全にアウェイでした。
そこで人づてに巡り合ったのは補綴の師匠である百閒谷(ひやっけんだに)先生です。先生は歯科医なら誰でも知る有名な勉強会を立ち上げた名医ですが、弟子をとらないことでも有名でした。私はその先生の生涯3人目となる弟子となったのです。
私が優秀だから弟子にしたのかと思っていたのですが、後々聞くと、面白そうだからという理由だったそうです。世の中知らない方が良いこともあるものです。
修行中ゆえ、給料は衛生士よりも安かったのですが、学びの宝庫でした。
高額な入れ歯やセラミックなどの仕事がメインの先生は、非常に理論的で何もそこまでしなくてもと思うようなことまで突き詰めるところがありました。
今となってはそのような小さな積み重ねが最終的に何倍もの差になって仕上がりに違いが出てくることが良くわかります。一見同じ形をしているものでも、中身が違えば予後は全く変わってくるので、いかに見えないところが大事か痛感します。
2年余り、先生やら技工士さんやらに厳しく指導を受けました。現在の歯科医師は、昔ながらの徒弟制度で学ぶことは珍しい部類に入ります。多くの歯医者は就職して見様見真似で仕事をおぼえ、勉強会などで知識をアップデートするのが普通です。しかし、臨床の現場では、先人たちのテクニックの結晶がものをいいます。その点で、医療は職人の世界に通じるものがあるのではないでしょうか。苦労はしましたが、やはり昔ながらの修行にも、それなりに大きな価値があるように思います。
問題がなかったわけではありません。妻の方が収入が多かったため、炊事などの家事が当然のように私の仕事になったこと。そしてそれがいまだに続いてしまっていることです。
つらつらと2回にわたって書きましたが、外科の修行の話はまたいつかしましょう。

クリニック名 野崎駅前歯科クリニック
TEL 072-863-2118
ADDRESS 大東市北条1-1-25 野崎駅前ビル2F